2010年6月6日日曜日

A BIG HUNK O' LOVE/恋の大穴



A BIG HUNK O' LOVE/恋の大穴

切なくなるほどカッコいい女がいる。抱きしめたいとは思わない。
ただそこにいればいい。追うとなにもかもが野暮になる。
でも、そのままというわけにも行かなくなったとき、風景は動き出す。

ピアノが逃げる。Hey baby  エルヴィスが追う。

恋のかけひきの幕が切って落とされる。エルヴィスは追う、
愛しのベイビーは逃げる、追って追って、かくれんぼ。
激情がブレイクする。そして最後に愛しのベイビーはエルヴィスの腕の中。

循環するアドレナリンの激流。
同じことが繰り返し全身を駆け巡る。
叩きのめされそうな時にすらエルヴィスは明るさを失わない。
タフで透明で突き抜けている声。
エルヴィスは転覆しそうなボートの上で立ち上がってはしゃぐ。
危険を覚悟して突き進む。永遠の若さと愚かさに満ちている。
ピアノとギターが絡むように炸裂する。

エルヴィスはそれ以上に自分の声を楽器のように扱う。
オレの声。唯一の声、芸術する声。
”これがオレだ!””オレの愛だ!”エルヴィスは声を支配する。

支配できる喜びと支配しなければならない悲しみの交叉するところから爆発する声の音楽。
生きるために幼くしてコントロールすることを覚えてしまった男の感情を爆発させた音楽。
太古からの感情に向きって自分を開放する快感、抑圧された不安が生きる力に昇華して発射される瞬間の”Hey baby ”ロックンロール。誰もこんなふうには歌えない。

意味のない言葉で世界を変える、それがロックンロールだ。
電気式ギターがロックの中心の時代に声がロックそのものだった素敵が響くだろうか?

独善的で無邪気な確信”a-will do, that,s right ”自分を信じる力が怒りを砕き不安を挑戦に変換して突進する素敵が聴こえるだろうか。

<恋の大穴>は意志が精霊となってマシンガンのように飛んでいく素敵に満ちている。 "No, no. no. no. no. no, no. baby."
愛するベイビーに向かって何が起こっているかを率直に伝える勇気がこの上なく元気だ。

丁寧にデジタル処理がほどこされたCDアルバムにシングルレコードの真髄が30個集められた。

ひとつひとつのどの曲のどの声にも自分を肯定していることが感じとれるはずだ。
”Hey baby ”「世界に自分はたったひとりだよ、自分のままに、自分のオリジナリティを生きろ」多くを望むな、すべてを望め。-------”a-will do, that,s right ”-------エルヴィス・プレスリーがいる。

ヘイ、ベイビー、
俺は多くを望んでるわけじゃない
No,no,no,no,no,no,baby、
多くを望んでるわけじゃない
でっかい、でっかい、でっかい恋の切り身が欲しいだけ
けちけちするなよ俺は飢え死に寸前さ
キスの一つや二ついいだろ
減るものでもなかろうに
そうさベイビー、多くを望んでるわけじゃない
でっかい、でっかい、でっかい恋の切り身が欲しいだけ
おまえは生まれつきのいい女
かわいくてたまらない
俺は欲張りなんかじゃないぜ、
おまえのすべてが欲しいのさ
そうさベイビー、多くを望んでるわけじゃない
でっかい、でっかい、でっかい恋の切り身が欲しいだけ

ポケットの中にはウィッシュ・ボーン(お守り)
手首にゃおまもりのうさぎの足までつけている
でもどんなおまじないつけたって比べものにもならないぜ
おまえに甘いキスさえできれば
そうさベイビー、多くを望んでるわけじゃない
でっかい、でっかい、でっかい恋の切り身が欲しいだけ
*でっかい、でっかい、でっかい恋の切り身が欲しいだけ・

2回くり返してフェード・アウト


1958年、当時すでに兵役に就いていた休暇中の6 月10日に録音、
1年寝かせて1959年7月12日にリリース、兵役中の1959年8月に全米ヒットチャート第1位になった。グラミー賞ノミネート。エルヴィス屈指の名作のひとつ。

恋の切り身の隣にありのままの自分を肯定した自分がいる。



『ワークス・オブ・エルヴィス』では次のように紹介されています。


”へイ・ベイビ一" でスター卜するエキサイティングなロックン・ロカルとバックが.追いかけうような構成もおもしろくエルヴイス自身大変に入っいるナンバで、60年代末から70年代にかけてコンサートでも登場しているーロシュロとシド・ワイチの共、ミオンセラを記録している
TOP100のほか、R&Bチャートでもヒット(10位)。第2回グラミー賞、Best Performance by a TOP40 Artist””Best R&B Performance”にそれぞれノミネ卜された



2010年4月16日金曜日

ア・フール・サッチ・アズ・アイ



ア・フール・サッチ・アズ・アイ

エルヴィス・プレスリーのベストを集めた「エルヴィス・プレスリー ゴールデンレコード第2集」のジャケットがエルヴィスがロックンローラ-だったことを語っているのは当たり前だ。キングだからね。なによりこんなに幸福になれるアルバムは他にない。

もうこのアルバムの<ONE NIGHT>には狂ってしまうよ、若いエルヴィスの声には一夜といわず一カ月ぐらいいいよ。この<ONE NIGHT>に匹敵する<ONE NIGHT>はキングのキャリアでも<シッドダウン・ショー>しかないだろう。

<恋の大穴>のピアノのノリはどうだい、ギターもかっこいい。エルヴィスもワイルドに爆発しているかと思ったら"that's right"って気合いいれるように歌うなんともかわいい声はどうなってるんだ!!声にギターとピアノが絶妙にからんで、ああ、この神業のようなバランスに狂ってしまう!このイカれ具合がロックンロールの神髄だ!

<I Need Your Love Tonight >の伴奏ってきたらどうだ。Oh!Oh!って一体どうなっているんだ。
このとってもデンジャラスな匂いのするラブソングで”hi-fi”って歌詞聴くたびに、そう掲示板で話題になっている<疑似ステレオ>を連想したよ。”I Need Your Love Tonight ”と求める愛まで疑似じゃないのかと思ったものさ。

あ、あ、あっ!出たっ!(Now And Then There's)A FOOL SUCH AS l <ア・フール・サッチ・アズ・アイ>
そのイントロが聴こえてきたら、もうどうにもこうにもなるもんか!渋いコーラスに続いて、ああ、なんとも、なんとも、ああ、美しい声!ああ、スウィング感!エルヴィス万歳!
(Now And Then There's)A FOOL SUCH AS l

【直撃レベル】
青は生きててよかったレベル
赤は狂ってしまうレベル
ピンクはよだれダラダラレベル

(Now and then therei s a fool such as I)
Pardon me if l'm sentimental
When we say goodbye
Don ' t be an gry with me
Should I cry
When you ' re gone, yet I' Il dream
A Iittle dream as years go by
Now and then, there ' s a fool such as I

Now and then, there ' s a fool such as I am over you
You taught me how to love
And now you say that we are through
I ' m a fool, but I ' Il love you, dear
Until the day I die
Now and then there 's a fool such as I

(間奏)

(Now and then, there's a fool such as I)
Now and then, there ' s a fool such as I am over you
You taught me how to love
And now you say that we are through
I ' m a fool, but I ' Il love you, dear
Until the day I die
Now and then there 's a fool such as I
Now and then there 's a fool such as I
Now and then there 's a fool such as I

いきなりだ!出合い頭の直撃パンチだ!”Pardon me”のPardonから meへの降下、ああ、こんなことがあっていいのか!あまりの甘さに頭から頬へと震えが伝わっている間に、ざらついた感触でスパッとブラッキラ棒に Should I cryと歌う。”Should”の切れ具合はどうだ、あっという間に一発で決める。なんという奴だ!そのあとに続く少し悲しげな声に鳥肌がたつ、ああ許してやりたい、許すしかない。と思っていたらsuch as Iでまた何気なく不敵な声でスパッとやる。コイツは確信犯だ。

コーラスのノリも最高だ!間奏が終わった後の”there ' s a fool such as I am””I ' m a fool, but I ' Il love you,”にはKOパンチだ!特に”there ' s a fool such as I am”は骨だって溶ける!隣にナースがいてくれなきゃ心配だ!これは犯罪だ。裁判所が「直立不動で歌え」とクレームつけるのも無理のない話だ。直立不動で歌ったってたくさんの人は失神したけどね。それにしてもこのギターはどうなっているんだ。チェット・アトキンスだろうが誰だろうが、ああ、たまらない。フェイドアウトに入る前の foolはどうだ。こいつは一体何を考えてこんな歌い方をするんだ!

しかし、この曲に対する思いと、世間の評価(ベストアルバムなどでの扱い方)にズレを感じていたが、ビリー諸口氏もこの”Pardon me”のmeの声とチェット・アトキンスのプレイに関して「最高峰」と評価しているのを発見して、永年の苦悩は金ラメスーツのポケットに消え去った。それにボブ・ディランがカヴァ-したのもオリジナルのハンク・スノウではなく、エルヴィスだったというのも当然だ。

このアルバムは「エルヴィス・プレスリー ゴールデンレコード第1集」と比較すると声が艶っぽい。完全無敵のロックンローラーとして躍動感にあふれている。自信が満ちあふれている。

< Don't >と< My Wish Came True>のみが1957年の録音、残りは1958年の入隊前後を中心として<ア・フール・サッチ・アズ・アイ>は兵役中の休暇を利用した1959年の録音。<ELVIS IS BACK!>の片鱗も聴きとれる。愛ピ、つまり私としてはキングのキャリアの中でも最もバランスがよかった時代と思う。天才がさらなる努力と研鑽と傲慢に磨かれて輝いて、金ラメのスーツがこれほど似合う男はいない。キングは地上最強の金ラメ男だったことを忘れるな!